位相ノート (記号を用いない, 言葉のみでの説明)

位相 (topology)

は簡単に言うと、
「近い遠いを判断するための部分集合の集まり」
という概念で、「距離」が決まっていれば、それから一意的に決まって しまうが、
原始時代のように(と大昔まで遡らなくても、戦国時代でも良いのだが)
統一された距離が決まってなければ、
体に触れればかなり近い、手を伸ばして届くなら近い、足を伸ばして届くならそこそこ近い
というように、自分の近傍を定義すれば、近い遠いの判断ができる。
そのような部分集合の全体を考えたものが位相だと言える。
(ちなみに戦国自体は、殿様の手の長さ等を元に、長さを決めていたということなので、
国ごとに長さの単位が異なり、距離が決まっていたとは言えないが、位相は、
国ごとに定義が出来て、違っていても、それらを合わせた全体で定義できるので、
より一般的な概念だと言える。)

兎に角、抽象的な分、
位相という概念は, 難しい!! と誰もが思う!!
何故か? -> 細かい概念が多過ぎる!!
これだけ押さえておけば良いというものでもなく,
必要に応じて, 見直して, その都度, 確認して行くという感じ.
しかし, その中でも, これぐらいは, 知ってないとね!!
という重要部分, というか必須部分はいくつかある.

有名な本は, 松本和夫著「集合・位相入門」(岩波書店)だと思 うが,
これも決して読み易い本とは思えない.
書き方, 説明の仕方の問題もあるのだろうが・・・.

初学者には, 竹之内脩 著「入門集合と位相」実教出版 が良いのかも・・・?

一度、勉強したことのある人向けには,
梅垣, 大矢, 垣原 共著「集合・位相。距離」(共立出版)
が良くまとまっていて, 良いかも.

同じ概念でも, 位相では, 色々な言い換えがあり, 同値なら,
どれを定義にしても良いのだが, 分り易い定義が良いのは確かだが,
ただ, その理解に何をイメージするかは人によって異なるので,
分り易いと思ったり, 逆だったりするのだろう.

例えば
「開集合」 1つをとっても,
位相空間なら, 「位相の元」 が定義で,
距離空間なら, 「任意の点で, 中に含まれる開近傍が取れる」 という定義で,
これは「内点のみ」, 即ち, 「内部」=「境界を含まない」と同値である.

「コンパクト」なら,
R^n では, 「有界閉」と同値だが, 距離空間では,
「全有界かつ完備」と同値となる.

従って, 位相を説明するとき,
一つの概念に対し, 同値な概念を, 状況毎に述べ,
関連する結果と証明を(可能なら全て)述べるという書き方をしてみるのも, 一つのやり方かなと.

目次(項目一覧)はこちら!!
記号を用いた、詳しい説明のノートはこちら!! ToplogyNotes.pdf 11p
上の英語版?はこちら!! ToplogyNotesE.pdf 8p

位相空間 topological spaces

「位相 topology=top.」とは,
部分集合のある集まりで, 次の3つを満たす:
(1) 全体集合と空集合は元,
(2) 2つの元の共通部分も元(従って, 有限個の元の共通部分も元),
(3) 何個の元でも (従って, 無限個であっても) それらの和は元

この位相の元を 「開集合 open set」と呼ぶ.
全体集合と位相の組を, 「位相空間 topological space=top. sp.」と呼 ぶ.

また, 補集合が開集合のとき, 「閉集合 closed set」と いう.
上の定義から, 明らかに, 全体集合と空集合は, 開かつ閉となる.

全体集合と空集合だけでも位相=
密着位相 indiscrete top., 自明な位相 trivial top.で,
任意の2点の距離が 0 で, 区別しない(できない)位相と言える.
このとき, 空でないどんな部分集合も連結となる.

また, 全部分集合族も位相
離散位相 discrete top.で,
これは全ての部分集合が開かつ閉となり, 1点集合以外は, 不連結である.

しかし, 位相とは近さ遠さを調べるための抽象概念であるから,
これらのどちらも, 両極端で, 役には立たない!!

従って, 目的に応じて適切な位相を入れることが重要となる.

後でも述べるが, n 次元実ベクトル空間には,
普通, 大きさから決まる距離を入れ,
(このとき, n 次元ユークリッド空間と呼ぶ.)
その距離を用いて, 開集合が定義されるが,
その開集合全体は明らかに, 位相の定義を満たす.
(ユークリッド位相と呼ぶ.)
従って, 普通, ユークリッド空間には, この位相が入っているものとする.

位相空間の部分集合に対し, その部分集合に制限して位相を入れた時
(つまり, その部分集合との共通部分を位相として入れる),
「相対位相 relative top.」と呼ぶ.

これは, ある程度慣れないと, 分りにくい面があるが,
要は, 相対位相=制限位相で, 制限=共通部分 だと思えば良い.
例えば, 1次元ユークリッド空間の半開区間 (a,b] に相対位相を入れると,
(a,b] 自身が全体集合なので, 開かつ閉で, その中の半開区間は,
位置に応じて, 閉集合になったり, どちらでも無かったり, 開集合になったりする.

距離空間 metric sp.

「距離 metric」 とは,
集合の任意の2点に対し, 無限大を含む非負の値を対応させる写像で,
非負性, 0値同一性, 対称性, 三角不等式を満たすときを言 う.

R^n に2点の差の絶対値(大きさ), 即ち,
各成分毎の差の2乗和のルートで距離となり,
この距離の元で, R^n を
「n 次元ユークリッド空間 Euclidean sp.と呼ぶ.

距離空間において,
ある点xを中心として, 距離δ未満の点全体 (中心x, 半径δの開円盤・開球) を,
U_δ(x) と表わし, x のδ-近傍, あるいは単に 開近傍 という.

距離空間における開集合 open setとは,
その集合の任意の点に対し, 中に含まれるような開近傍が存在する.
(即ち, 適切な半径δが存在し, δ-近傍が中に含まれる.)

これは, 境界のどんなに近くの点であっても成り立つので,
境界点を含んでいないことを表す.

ちなみに, ある部分集合に対し,
境界点とは, どんな開近傍をとっても, その集合の点と, 外=補集合の点を含むときをいい,
内点とは, 中に含まれる開近傍が存在するときをいい,
外点とは, 外=補集合に含まれる開近傍が存在するときをいう.

境界点の全体を 境界といい, 内点の全体を 内部, 外点の全体を 外部という.

上の開集合の定義は, 集合が内点のみで構成されている,
つまり境界点を全く含んでいないことを言っている.

閉集合 closed setとは, 境界を含むときをいう.
このとき, 補集合は外点のみとなり, 明らかに, 開集合となるので,
補集合が開集合という位相での定義と同値になる.

また開集合の全体は, 位相の定義を満たし,
距離空間では, 距離に応じた位相が1つ決まるので位相空間でもある.


位相空間においても, 距離空間の時のように, 近傍を定義し,
逆にそれらを用いて, 開集合, つまり, 位相を定義することができる.

任意の点を固定し, その点を含む部分集合がその点の 近傍であると は,
点と集合の間に開集合がある, 即ち, 点がその集合の内点であると定義.
またその全体を, 点の近傍系という.

近傍が開集合なら, 開近傍, 閉集合なら, 閉近傍という.
・明らかに, 閉近傍系は, 開近傍の閉包の全体である.
但し, 閉包 closure は, 境界を加えたもので, 境界(点)は, 上と同じように
任意の開近傍が集合の点と補集合の点の両方を含むと定義.

固定した点を含む任意の開集合は, その点の開近傍である.
これにより,
[開集合 ⇔ その集合の任意の点に対し, その集合がその点のある(開)近傍を含む].
となり, 距離空間の時の定義と同じになる.

「位相基(底) topological basis, 開基 open basis」
とは, 位相の一部で, それらの和全体が位相と一致するものと定義.

当然, 位相自体も位相基で, 沢山ある可能性があり, 一意的ではない.

更に,
「准基(底) quasi-basis」
とは, ある位相基の一部で, 任意の有限個の共通部分の全体が
位相基 (初めの位相基と同じでも別でも構わない.) となるときをいう.
ここでは, 0個も有限個として, その共通部分は全体集合とする.

位相基自体も准基なので, こちらも一意的ではない.

1次元ユークリッド空間で,
(端点が有理数であるような) 開区間全体は, 位相基で,
(端点が有理数であるような) 半直線 (-∞, b), (a,∞) の全体は, 准基となる.

n 次元ユークリッド空間では,
(中心が有理点, 半径が正の有理数の) 開球全体や, (端点が有理数の) 開区間の直積全体は位相基.
准基も1次元と同様にして作れる.

これらは後でいう第二可算公理(可算位相基の存在)を満たす.

「基本近傍系=近傍基 neighborhood basis」
とは, 厳密には, 点を1つ止めて, その 「点の基本近傍系, 近傍基」で,
その点の近傍系の一部で, 任意の近傍に対し,
点とその近傍の間に入る元(近傍)を必ず持つものをいう.

ユークリッド空間で,
各点で, 自然数 n に対し, 半径 1/n の開球全体を考えれば, 近傍基となる.

「第一可算公理 1st axiom of countability」
=可算近傍基が存在. 厳密には, 任意の点で, 可算近傍基が存在

「第二可算公理 2nd axiom countability」
=可算位相基が存在.

明らかに, 第二可算⇒第一可算

連続写像 continuous mapping

集合から集合への 「写像 mapping=map.」とは,
写される側の各元に対し, 行き先の元が唯1つだけ決まる対応をいう.

位相空間から位相空間(同じでも異なっていても良い) への写像が
「連続」であるとは, 開集合の引き戻しが開集合のときをいう.
即ち, 行き先の位相の, 写像による引き戻しが, 元の位相に含まれるときをいう.

当然, 同値な定義として, 閉集合の引き戻しが閉集合のときも連続となる.

この定義と,
実数値関数が区間で連続の定義を一般化した,
距離空間から距離空間への写像が各点で連続であるという (ε-δ論法での) 定義は同値である.
ちなみに, 距離空間でのε-δ論法での連続の定義は,
「各点において, 写像で写した点での任意のε-近傍に対し, 元の点のあるδ-近傍が存在し, その中の点は全て, 先のε-近傍の中に写る 」
⇔ 「各点において, 写像で写した点の任意のε-近傍に対し, その引き戻しに含まれるような元の点のδ-近傍が存在する」
という言い換えができる.
これと「開集合の引き戻しが開集合」という命題が同値となる.
 実際, (⇒) 開集合の引き戻しの任意の点をとると, 写した先が開集合なので中に含まれるε-近傍があり, 上の定義きょり, その引き戻しに含まれる, 初めの 点のδ-近傍が存在する. これは引き戻しも開集合であることを意味する.
 逆は, 任意の点を写した先の任意のε-近傍を考える. 開集合なので, その引き戻しも開集合で, その中に元の点があるので, その点のあるδ-近傍が含まれるようにできる. これは上の最後の言い換えと同じことを言っている. ■

・単なる集合から位相空間への写像が与えられたとき,
行き先の位相の引き戻しを, 元の集合の位相と定めれば, この写像は連続となる.

この元の集合に与えた位相は, 写像を連続とする最弱位相である.

上とは逆に, 次を考える:
・位相空間から集合への写像があり, 全体集合の像集合において,
引き戻しが開集合となる部分集合全体を考えれば, 像集合の位相となる.

これはこの写像を連続とする像集合の最強位相である.


位相空間にある同値関係があり, その商集合(代表元全体の集合)への自然な写像,
各元に代表元を対応させる写像を考えれば, これを連続とする最強位相が,
商集合に入れられる. これを 「商位相 quotient top.」と 呼ぶ.

また, 開集合の像が開集合のとき, 開写像 open map.と いい,
閉集合の像が閉集合のとき, 閉写像 closed map.と いう.

一般に, 写像の引き戻しは, 集合演算を保つが, 像の方は保つとは限らないことに注意.

「同相=位相同型 homeomorphic」
とは, 全単射な写像が, 連続かつ開写像のときをいう.
これは, 写像と逆写像が共に連続と同値.

「直積位相 product top.」
有限個の位相空間の直積の位相は,
各位相の直積を位相基として定義する.
つまり, 各開集合の直積の色々な和で表される集合全体を直積集合の位相と定める.

無限個のとき,
簡単に言えば,
全ての射影を連続にする最弱位相として直積位相を定義する.

より具体的には,
任意の有限個までは, 各位相(開集合)の直積で, それ以外は全体集合の直積であるようなもの
全体を考え, これを位相基とする位相を (即ち, いくつもの和集合全体を) 「直積位相」として定義する.

別の言い方をすれば,
直積位相は, 各射影による位相の逆像全体を准基として定まる位相ともいえる.

各射影による位相の逆像全体の任意の有限個の共通部分は,
その有限個の部分だけが, 任意の各位相=開集合で, それ以外は, 全体集合となる.
これを位相でのシリンダー集合という.
このシリンダ−集合全体のいくつもの和集合を考え, その全体が直積集合での位相となる.)

「コンパクト compact=cpt」 任意の開被覆に対し, 有限部分被覆が存在するときをいう.
開被覆とは, 開集合のある集まりで, 対象の集合を覆う,
つまり開集合の和がその集合を含むときをいう.

ちなみに, 補集合, 対偶の順に考えて,
「開被覆に対し, 有限部分被覆がある」
⇔「共通元が無い閉集合族に対し, 有限個でも共通元の無い組がある」
⇔「閉集合族で, 任意の有限個の共通元があれば, 全ての共通元がある」
⇔「有限交叉性をもつ閉集合族に対し, 必ず共通元がある」
(ある集合族が 有限交叉性をもつとは, 任意の有限個の共通部分が空でないこととする.)

全体集合が cpt のとき, 「cpt(位相)空間」といい,
部分集合が cpt のとき, 「cpt(部分)集合」といい,
閉包が cpt のとき, 「相対cpt」という.


・位相空間が cpt は次と同値:
任意の有限交叉性をもつ閉集合族に対し, 共通元が必ずある.
更に, 第二可算公理を満たすなら, 点列 cpt と同値(→後証).

・cpt 部分集合に含まれる任意の閉集合は, cpt.
 閉集合の任意の開被覆に閉集合の補集合を加えれば, cpt 部分集合の開被覆となるので, 有限個で覆えるので, 後は容易. ■

・Hausdorff 空間の cpt 部分集合は閉
 cpt 集合の補集合の任意の点に対し, cpt の中の任意の点とを分離する それぞれの開近傍がとれ, cpt の中の点の開近傍全体は開被覆となるので, 有限個が選べて覆える. これに対応する元の補集合の点での開近傍の有限個の共通部分も開近傍で, これは有限被覆の和とは交わらないので, 補集合に含まれる. よって, 補集合は (各点での cpt と交わりのない開近傍の和で表されるので) 開となり, 元の cpt は閉. ■

・cpt 集合の連続像 (連続写像による像) は cpt.
 像の任意の開被覆を考え, その引き戻しを考えれば, 元の cpt 集合の開被覆となるので, 後は明らか. ■

・cpt 位相空間から Hausdorff 空間への連続写像は, 閉写像で,
特に, 全単射なら, 同相写像となる.
 上の結果の組合せで分る. 実際, cpt 空間での任意の閉集合は cpt で, その連続像も cpt で, Haus 内なので, 閉. ■

Tychonoff チコノフの定理
任意個の cpt 空間の直積も cpt. 逆も成立 (こちらは, 射影の連続からcpt像もcptより).
但し, 非可算個の場合は, 選択公理を用いる. (とZorn の補題も使う証明があるが必要か!?)
 有限交叉性をもつ任意の閉集合族を1つとり, これを含み有限交叉性をもつ集合族の集まりを考えれば, 包含関係による順序での帰納的順序集合となる. ここで Zorn の補題を用いて, 極大元の1つを取っても良いのだが, 1つの全順序部分の各集合族の元(集合)の全体の集まりを考えれば, そこでの最大元=極大元となることが示せる ので, これを用いれば良い. 後は, この元(集合)の閉包の共通部分が空でないことを示せば良い. その際, 各集合の同じ射影先が cpt より, その閉包の共通元がとれるので, 選択公理により, 直積集合での点が1つとれることになる. 後は, 直積位相の位相基と極大の集合族の性質を上手く用いて, 各集合の閉包の点となることが示せて証明が終わる.
(この詳しい証明については, 言葉だけでは厳しので、省略する.) ■

・(n 次元)ユークリッド空間において, コンパクト=有界閉
 まず, 「cpt なら有界」は, 各点で半径1の開近傍をとれば, cpt性より, 有限個で覆えて, どれか1つの中心から, 個数の半径の閉球で囲めるので, 有界. また, Hausdorff の中のcpt は「閉」である.
 逆は, まず, 有界性から, n次元閉正方体で囲める. (以下では, 背理法で示すが, その証明は, 有界閉正方体がcptであることの証明にもなっている.) もし, ある開被覆があり, その有限個で覆えないとする. 閉正方体を2^n等分し, そこに含まれる元の集合の部分で, 有限個で覆えないものがどこかにはあるので, 1つとり, その閉正方体を再び, 2^n 等分する. 以下, これを繰り返せば, どこか1点に収束する. 当然, それは元の有界閉集合の点となるので, その点を含む開被覆の1つがある. よって, その点の開近傍で, 開被覆の1つである開集合に含まれるものがある. しかし, これは, 収束する閉正方体列の極限点の近傍なので, ある番号から先を全て含むことになり, それらは開被覆の1つで覆えたことになってしまう. しかし, 閉正方体列は, (中の元の集合部分が) 有限個で覆えないものを選んでいたので, 矛盾. ■

・cpt集合上の実数値連続関数は, 最大値・最小値を持つ.
 cpt の連続像が cpt で, R の有界閉なので, その sup, inf が max, min となり, 明らか. ■

・cpt Hausdorff 空間は, 正規空間 (T_1+T_3). (→後証)

「点列コンパクト sequentially cpt」
その集合の中の任意の点列が, 収束部分列を持つときをいう.

但し, 「位相空間における点列の収束」とは,
極限点での任意の開近傍に対し,
ある番号が存在し, その番号以上の任意の点列のメンバーが,
その開近傍の元となることと定義する.

この定義から, 次がすぐ分る:
「閉集合の中の任意の収束列の極限点もその閉集合の点となる」

 実際, もし, 極限点が閉集合の中に無いとすると, 補集合が開なので, 中に含まれる開近傍が存在するが, 収束の定義から, ある番号から先は全て, この近傍の点となる. これは点列自体が閉集合の点であることに反する. ■

「可算コンパクト」
任意の可算個の開被覆に対し, 有限部分被覆が存在する.

「局所コンパクト locally cpt」
各点の近傍で, 閉包が cpt なものが必ず存在する.

・cpt ⇒ 可算cpt  定義より, 明らか
・点列cpt ⇒ 可算cpt
 有限交叉性を持つ可算個の閉集合族の共通元があることを示せば良い. 閉集合族の1番目からn番目までの共通元を1つずつ固定すれば, 仮定から, 収束部分列がとれ, その極限点が全ての共通元となる. ■

第一可算公理の下では, 可算cpt ⇒ 点列cpt もいえるので, 同値.
 任意の点列に対し, n 番目から先, 全ての集合の閉包を考えれば, その全体は, 明らかに, 有限交叉性をもつ. 可算 cpt 性より, 全ての共通部分が空でないので, その元を 1 つをとり, 後はその点に収束する部分列があることを示せば良い. もしその点のある開近傍があり, ある番号から先の点列を含まないとすると, その閉包も含まないので, 共通部分がその開近傍の補集合にあることになり矛盾. 従って, 任意の近傍に対し, 任意の番号から先の点列と交わりをもつ.
今, 可算近傍基があるので, その中に含まれる点列の元を 1つずつ上手く固定すれば, それが収束部分列となる、 詳しくは, 可算位相基の k 番目までの共通部分と 点列の k 番目以上の番号との交わりで, 順に番号が大きくなるものをとれば良い.

更に,
第二可算公理の下では, 可算cpt ⇒ cpt, 即ち, 同値

 可算位相基をもつので, 任意の開集合は, 位相基の高々可算和で表される. 従って, 任意の開被覆の和も開集合なので, 可算個の位相基の和で表される. 可算 cpt なら, その有限個の位相基で覆えて, 各位相基に対し, それを含む元の開被覆の中の開集合が1つ以上はあるので, それを1つずつ固定すれば, 結局, 有限個の開被覆があることになる. ■

可算cpt + Lindel\"of の性質 ⇔ cpt
但し, Lindel\"of の性質: 任意の開被覆から可算個の開被覆が選べる.

他にコンパクト化という話題がある.
・局所cpt Hausdorff 空間は, 1点cpt化により, cpt Hausdorff とできる.
この時に限り, 1点cpt化可能である.

R に無限遠点∞を加えて, ±∞を繋いでしまえば, 円周と同相となり, cptとなる.
また複素平面に無限遠点∞を加えて, 風呂敷で包んで、上(の∞)で結ぶようにしてしまえば,
球面となる. これを Riemann 球という. これも1点コンパクト化である.

「連結集合 connected set」は,
相対位相で, 2つの空でない開集合で分割できないときをいう,
このとき, 中に含まれる開かつ閉な部分集合は, 空か元の集合自身となる.

・連結集合の連続像は連結.
 背理法 もし連結でないとすれば, 2つの空でない開集合で分割できる. この引き戻しを考えれば, 元の空間が不連結となり, 仮定に反する. ■

・連結集合の閉包とその間の部分集合も全て連結.
 背理法: もし間の部分集合が不連結なら, 2つの開集合で, 空でない部分に分割できる. すると元の連結集合も分割され, 共に空でないことが示せて矛盾. 実際, もし, 一方が空なら, その閉包も空となり, 元の集合が空でない部分に 分割できたことに反する. ■

・連結集合族があり, どの2つの集合も交わりがあれば, 全ての和も連結.
 背理法で容易. ■

・直積集合が連結⇔元の集合が全て連結.
 ⇒射影は連続で, 連結の連続像も連結なので明らか.
 逆は, まず, 2個のとき. それぞれの元を1つ固定して, 他方との直積を考えれば, どちらも, 直積位相で連結で, 固定した点の直積点を含むので, 上の結果から和も連結. 更に, 最初に固定した点の1つだけ動かして考えれば, それらは全て, 他方と交わりを持ち, 全て連結なので, 全ての和も連結で, これは, 全体の直積である.
一般の場合.
直積集合の点を1つ固定し, その任意の有限個の成分部分をそこでの 全体集合に置き換えた直積集合の全体を考える. 要は, 任意の有限個の直積と他は, 固定した点の成分である直積集合の全体 である. 最初に固定した点は, 共通元で, それぞれは連結なので, これら全ての和の閉包も連結で, これが全体の直積集合となる. (非可算個の場合, 点の固定で, 選択公理を用いる.) ■

更に, 極大な連結部分集合を 「連結成分」という.

例えば, R から 0 を除いた集合 X は, 連結でなく, 連結成分は
(-∞,0) と (0,+∞) となる.

・R 内の連結集合は区間 [a,b], (a,b], (a,b), (a,b] のみである.
但し, a=b なら, [a,a]={a} で, 他は空.
a=-∞なら (-∞ とみなし, b=+∞ なら +∞) とみなす.

・連結集合上の実数値連続関数は, 中間値の定理を満たす.
即ち, 任意の2点の値の間の任意の値をとる元の点が存在する.
 連結の連続像も連結で R の区間となるので, 明らか. ■

また, 任意の2点を結ぶその集合内の弧があるとき,
「弧状連結」といい, 「弧状連結⇒連結」である.
但し, 2点を結ぶ弧とは,
[0,1] からの連続写像で, 0, 1 がその2点になるものがあり, その像をいう.

R^2 で次の線分の和は, 連結だが, 弧状連結ではない.
(0,1]x{0}, {0}x(0,1], {1/n}x[0,1] (n=1,2,...)

 原点を含まないので, 弧状連結でないことは明らか, 連結を示せば良い. 最初の線分以外の和は, 弧状連結なので連結で, しかも閉包は, 最初の線分を含む. その閉包から原点を除いたものが, 対象の集合なので, 上の結果から, 連結. ■

局所連結
近傍基が全て連結集合として選べるときをいう.

・局所連結⇔任意の開集合の連結成分が開集合
 ⇒空でない開集合の連結成分を1つとる. 中の任意の点に対し, 局所連結より, 連結な近傍で連結成分に含まれるものがある. 実際, 連結な開近傍で元の開集合に含まれるものがあり, これが連結成分にも含まれる, (もし含まれなければ, 和が連結となり, 成分の極大性に反する.) 従って, 連結成分は開集合.
 逆は, 各点で, 連結な開近傍をとり, その全体が位相基となることを 示せば良い. 任意の開集合とその点に対し, 点を含み開集合に含まれる連結成分がある. 実際, 1点集合は連結なので, その点を含む開集合内の連結集合全体の和=連結成分 となる. 仮定より, これは開集合となるので, これ自体が, 開近傍となり, この全体が位相基であることになる. ■

同相と、コンパクトと連結

・同相なら, コンパクト性と連結性は保たれる.
(同相写像は, 全単射で, 連続かつ開写像なので, 容易に示せる.)

この事実を用いると次が分る:

・直線 R と平面 R^2 は, 同相ではない!!

より正確には, 普通の大きさによる距離の入った直線 R と平面 R^2,
即ち, ユークリッド空間の R と R^2 は, 同相ではない!!
同様に, R^2 と R^3 も同相ではない.
R^n と R^{n+1} も・・・.

 R から原点 0 を除くと, 連結ではなくなるが,
R^2 から1点を除いても連結のままなので, 同相ではない.
(もし同相なら, 連結性は保たれるので.) ■

同様に平面を直線(を除いて)で2つに分けると連結でなくなるが,
空間を2つに分けるには, 平面で分けるしかなく,
もし同相なら, 除く方の直線と平面も同相でないとダメだが,
上の事から, それは言えない.

次元を上げても同様.

・R と (0,1) は同相だが, これらと (0,1] は同相ではない.

 (0,1] から 1 のみを除いても連結だが, (0,1) から1点を除くと, 連結でなくなるため. ■

・直線 R と円周 S^1 も 同相ではない.
同様に, 平面 R^2 と球面 S^2 も同相ではない.
R^n と S^n も・・・。

 S^n はコンパクトだが, R^n はコンパクトではないため. ■

【参考】
上に出てきた集合は, 何れも「濃度」は「連続無限」なので,
全単射な写像は作れるが, それが位相を保つことは出来ない!!
ということを上の事実は表している.

例えば (0,1] から (0,1) への全単射な写像は,
1を1/2 へ, 1/2を 1/3 へ, …, 1/n を 1/(n+1) へ写して, 他は自分自身へ写せば良い.

(0,1]^2 から (0,1] への全単射は,
点 (x,y) を無限小数表示して, その数を交互に並べた無限小数を対応させれば良い.
但し, 1=0.999… と表示.

分離公理 separation axioms

T_1 (Fr\'echet の公理)
任意の異なる2点が, 先の点の(開)近傍で分離できる.
(ということは, 入れ替えれば, 後の点の開近傍でも分離できる.)
これは, 各点において, 近傍全ての共通元がその点のみと同値.
 異なる2点が, どんな近傍でも分離できないことと近傍の共通元が, 2点以上とは同値.

このとき,
先の点 x 以外の点の分離開近傍(x を含まない開近傍)の和を考えれば,
{x} の補集合で 開集合なので, 1点集合は閉集合.
つまり, T_1 は「任意の1点集合が閉集合」と同値.

T_2: T_2 空間=Hausdorff 空間
任意の異なる2点が, ぞれぞれの開近傍で分離できる.

これは, 各点で, その点の閉近傍=開近傍の閉包の全ての共通元がその点のみと同値.
 実際, もし共通元が他にもあれば, どんな閉近傍をとっても, 2点含む.
しかし, T_2 から, それぞれの開近傍で分離できるので, 元の点の方の開近傍の閉包は, もう一つの点の開近傍と素となり, 上の結果と矛盾する. 逆に, 異なる2点に対し, 仮定から一方のある開近傍の閉包は, 他方の点を含まない. ということは,
その閉近傍の補集合は他方の点の開近傍で, これでそれぞれの開近傍で分離されたことになる.


この空間では, 数列の極限の一意性が成り立つので,
普通はこの公理を仮定する.


自然数の全体に, 閉集合を, 全体と空と有限集合のみとして定義すると,
任意の開近傍は有限集合の補集合なので, 交わりは必ず, 無限集合となる.
これは, T_1 ではあるが, T_2 にはならない.

このとき, 数列 {n} を考えると, これは全ての自然数に収束することになる.
実際, どんな開近傍も有限集合の補集合なので, 必ず, ある番号から先を全て含むので,
どんな点で近傍を考えても, その点に収束することになってしまう.

T_3 (Vietoris の公理)
任意の1点とそれを含まない閉集合が, ぞれぞれの開近傍で分離できる.

T_4 (Tietoze の公理)
任意の互いに素な 2つの閉集合が, ぞれぞれの開近傍で分離できる.

他に,
T_1 よりもっと弱い分離公理として, 次があるが余り役に立たないので,
普通は考えないというか, T_1 を正確に理解するためには役に立つ.
T_0:
任意の異なる2点が, どちらかの点の開近傍で分離できる.


明らかに, T_2⇒T_1⇒T_0 で,
更に,
正則空間=T_1+T_3⇔T_2+T_3
正規空間=T_1+T_4⇔T_2+T_4

・正規⇒正則⇒Hausdorff⇒T_1

T*: 任意の点とそれを含まない空でない閉集合に対し, 点で 0, 閉集合上で 1 となる
[0,1] に値をとる連続関数が存在する.

完全正則=T_1+T*

・正規⇒完全正則⇒正則
 最初の矢印は, 次の補題と T_1 から 1 点集合が閉なので明らか. 次の矢印も, T* の連続関数での, 1/2 より小と 1/2 より大の引き戻しを考えれば明らか. ■

【Urysohn の補題】 T_4 は次と同値:
任意の互いに素な2つの閉集合に対し, それぞれの上で 0 と 1 となる [0,1] に値をとる連続関数が存在する.
まず, T_4 と次の T_4' が同値であることに注意する:
T_4': 空でない閉集合とそれを含む任意の開集合に対し, その間に入る開集合で, その閉包も開集合に含まれるものがとれる.
 T_4 なら, T_4' の仮定の 開集合の方の補集合を考えれば, 交わらない閉集合が2つあることになり, 先にある閉集合の開近傍が求めるものとなる. 逆は, 後の方の補集合を考えれば, 他方を含む開集合となることから, 容易に分る, ■
T_4' から連続関数を作るには, 閉集合を含む開集合を G_1 とし, 初めに間にとれる開集合を G_0 として, 更に, その閉包とそれを含む開集合の間に同様な開集合 G_1/2 をとり, さらに G_0, G_1/2 と, G_1/2, G_1, それぞれの間に開集合 G_1/4, G_3/4 というように, 2進有理数 r=k/2^n に対応する開集合 G_r を取って行く. f を G_0 上 0, G_1^c 上 1 として, その間 (G_0 と G_1 の間) で, f(x)=inf{ r; x\in G_r} と定義すれば, これが連続となる.
 逆は, T* なら T_3 のときと同様. ■
・cpt Hausorff は正規
 cpt の中の閉集合が cpt であることと, T_2 より, まず, 1点とそれを含まない空でない閉集合が, それぞれを囲む開集合で分離でき, 更に, そのことから, 2つの交わらない閉集合もそれぞれを囲む開集合で分離できる. ■

・正則+第二可算公理は正規
 交わりのない2つの空でない閉集合をとる. 正則性より, 1点とそれを含まない空でない閉集合に対し, 1点の開近傍で, その閉包が, 閉集合と交わらないものがとれる. しかも可算位相基を持つことから, その開近傍として, その可算位相基からとれる. 従って, 可算位相基のメンバーで, 先の閉集合の各点と後の閉集合に対応するものと, 閉集合を入れ替えたものに対応するものがあり, それらを使って, 上手く閉集合を分離する開集合を作ることができる. ■

【距離空間において】

可算近傍基をもつので, 第一可算公理を満たし,
更に, T_1, T_4 を満たすので, 正規空間でもある.

可分(稠密な可算部分を持つ)と第二可算公理は同値.

全有界(任意の正数に対し, それ以下の直径の有限開被覆を持つ) ⇒可分.

・距離空間において, 次は同値:
コンパクト, 可算コンパクト, 点列コンパクト, 全有界かつ完備
但し,
完備 complete とは, 任意の Cauchy 列が収束することで,
コーシー Cauchy 列 とは, m,n番目の項の差が, m,n を無限に持って行くと, 0 に収束するもの.

ユークリッド空間は完備.
 本質は 1次元で, Cauchy 列は有界で,
Bolzano-Weierstrass の定理より, 収束部分列がある. 元が Cauchy 列なので,
同じ極限に収束する(ことが容易に示せる). ■

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